「一緒に住むって、こんなにドキドキするもんなんだな……」
高校二年生、青春の真ん中。その球場に立っていたのは、ただの野球部員・広井玉緒。だが彼の日常は、ある日を境に一変する。親の再婚により、彼がずっと憧れていた美少女・穂村蘭とまさかの“同棲”が始まってしまったのだ。
『だぶるぷれい』（著：ムラタコウジ）は、部活×恋愛×家庭環境という思春期のすべてをぶつけたような青春ラブストーリー。タイトルの“だぶるぷれい”が意味するのは、野球用語であると同時に、二人の“同居”というもうひとつの二人遊戯。まさに、読者の心を捕まえて離さないエモーション満載の作品だ。
蘭はソフトボール部のエースで、明るく奔放な中にも繊細な感情を抱えるヒロイン。一方、玉緒はどこか不器用でありながら誠実で、彼女に対する想いをまっすぐに抱いている。秘密を知り、生活を重ね、すれ違いながらも惹かれ合う。そんな二人の関係が、ついに両想いへと発展していく過程は、まるで一試合一試合を見守るような緊張感と高揚感に満ちている。
さらに物語は一途な恋にとどまらない。第二のヒロイン・笛吹風紀は吹奏楽部の繊細で内向的な少女。そして第三のヒロインもまた登場し、玉緒の“青春”はますます複雑に、そして濃密に交差していく。読者は、単なるハーレムではない“恋の意味”に直面する彼の葛藤を通して、甘さと苦さが交じり合う現代的な恋愛模様を体験することになる。
ムラタコウジ先生の描く繊細な心理描写と、日常の何気ない一瞬に詰まった“ドラマ”は圧巻。例えば、部屋に置かれた片方だけのスリッパ。消し忘れた蛍光灯。ふと視線が重なった瞬間。そういった日常の断片が、二人の関係の“温度”をじわじわと伝えてくれる。
作品のテンポも絶妙で、コメディとシリアス、感情の爆発と沈黙が絶妙に切り替わる。とくに恋愛の“リアルさ”を感じさせるやり取りには、思わずページを戻って何度も読み返したくなるような熱と真実味がある。
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恋はいつだって不確かで、だけど確かに胸を熱くする。『だぶるぷれい』はそんな、誰もが一度は憧れた“誰かと過ごす青春”を、丁寧に、鮮やかに描いている。
この物語に触れたとき、あなたの中にもきっと、忘れかけていた“きゅん”が蘇るだろう。
